ひとくち知識
フルミストについて 2024.10.27
噴霧式のインフルエンザ生ワクチンで、今年から開始しました。米国では2007年から使用されヨーロッパなどでも10年くらい前から使用されています。初めはとても有効だったのですが、2013年に米国で有効性が証明できず2014年米国CDCは推奨をとりやめています。原因について調べたところ米国2013年9月は気温が高く、この時期に医療機関に搬送されたことが理由の一つではないかと言われています。特にA型H1N1の株が熱に弱い株であることが後に判明し、その後H1N1は別の株に変更されております。同年カナダでは同じ株を使って予防接種が行われており、カナダでは有効率に特に問題なかったとのことで、この推測を裏付けております。その後新しい株のフルミストは有効であることが確認され、今は米国CDCもフルミストを推奨しております。
国内での有効率が28.8%であると報道されていますが、このデータの対象者の年齢は2歳から18歳までで内訳は12歳以上が67%であることに注意が必要です。12歳以上はすでにインフルエンザに2〜3回以上かかったことのある人が大半ですので、不活化ワクチンでもこの年齢ではインフルエンザワクチンの有効性は証明できません。ワクチン有効率とは接種した人としない人でインフルエンザの発症率を比較するもので、接種しない群でインフルエンザの免疫を持った人が多数いるとそれほど有意な差は出ません。つまり有効性が証明できないというのははっきりとした差が出ないということで、効果がないということではありません。不活化ワクチンの12〜18歳の有効率はおそらく28.8%と大差ないと思われますし、むしろさらに低いかもしれません。国立感染研が不活化インフルエンザワクチンの有効率を調べていますがだいたい50%前後という結果でした。当院では当院での接種者で有効率を調べる予定です。
4歳以下のコロナワクチンについて 2024.1.15
現在横浜市から4歳以下のコロナワクチンについてお知らせが届いているようです。今コロナ感染はかなり落ち着き重症化する児はかなり少ないのに何故今頃こんなお知らせを送るのか不思議です。まず申し上げたいのは4歳以下の児に対しコロナワクチンを推奨しているのは主要な国では米国と日本だけです。欧州、英国イタリアは小児科学会、予防接種委員会のホームページに4歳以下のコロナワクチンは推奨しないとはっきり書いてあります。米国は多数の小児がコロナで死亡しまた重症化していますのでこれは推奨するのは当然かと思います。しかし日本では死亡は米国よりはるかに少なく、重症化例、例えばMIS-Cは米国7000人以上に対し日本はまだ100人未満です。人口比を考えても日本の子供は米国よりはるかに軽症と言えます。重症度はイタリアよりも低いと言えます。一方コロナワクチンによる死亡心筋炎が12歳以上で報告されていますし、5歳―11歳でも心筋炎の報告があります。4歳以下のコロナワクチンの副反応のデータは十分ではありませんがこれは接種率が5%程度と低いからです。今の時点では4歳以下のコロナワクチンは危険というデータはありませんが安全と言い切るデータもありません。
もう一つ大事なのは厚労省の報告では医療機関を対象とした調査で、新型コロナの抗体保有率(つまりすでに感染した率)は0−4歳で55%程度、5歳から14歳に至っては75%近くと小児はすでに大半の児が感染しているということです。関西の小児科の先生の調査では小児のコロナウイルス再感染率8か月間の調査では約3%でした。つまり子供は半分以上がすでに感染し、感染による抗体を持っている児はコロナにはかかりにくいということです。今からコロナワクチンを接種する意味はかなり低いと思われます。
コロナ感染の現状と今後の見通し2023.11.4
最近コロナ感染者数は減少し続けており、9波は終わりのようです。先週、神奈川県では定点あたりの患者数は1.67人でした。これまでの国内コロナ感染者数の合計は正確な数は不明です。厚労省への報告数はあくまで検査で診断された例数で、しかも今は定点からの報告です。そのため感染者の概数を知るため5月に16〜69歳の献血の検体を用い検査が行なわれ、その結果は抗体陽性率は42.5%でした。これを根拠に厚労省、小児科学会はまだ多数の未感染者が残っているとして、コロナワクチンの接種を推奨しています。しかし7~8月に関西の臨床の先生方が来院した患者で調べたデータでは小児の7割がすでに感染しているというデータが出ています。
どちらが正しいのかですが、私が思うにコロナに感染した人はまだ後遺症が出るかもしれない、またコロナに感染したことによって何か異常な物質ができているかもしれない、などと考えて、献血は避けるのではないでしょうか。コロナの感染後どうなるかについてはまだよくわかっていないわけですから。ですから献血の血液を用いた検査では感染率は実際より低く出るのではないかと思います。関西の臨床の先生のデータが実際に近いのではないかという気がします。
最近浜松医科大の先生が入院患者でコロナ抗体陽性率を調べていますが、こちらは52%でした。
子どもも含め国民の半数以上が感染しているとしたらもう大きな波は来ないような気がします。
今年のインフルエンザについて 2023,10,5
今年(2023年度)のインフルエンザ流行は現時点まで前シーズンの流行が続くというかってないパターンを取っております。今後の予測は難しいのですが一つヒントになるのは昨年の欧米の流行パターンです。昨年欧米では10月に流行が始まり12月にピークを迎えるという例年より早い動きを見せました。日本は昨年は流行は12月に極めて小規模に始まりその後も小規模に流行が続くという極めて異例のパターンを取りました。今患者数が少し上昇しつつあり、今後早い時期に大きな流行となる可能性もありますが、日本は欧米と違ってまだ感染対策をそれなりに行っており欧米のような大流行にはならない可能性もあります。もう一つのファクターはコロナの流行です。コロナは今減りつつありますが、まだしばらく続く可能性があります。コロナとインフルは競合する部分がありコロナの流行が続くと大流行にはならない可能性もあります。日本の感染対策とコロナと、この二つの要因がどう作用するで流行の推移が決まると思います。
今後のコロナ流行の予測 2023.2.6
ようやく第8波が減少傾向となりました。といってもこのまますんなり終わることはなく諸外国のように小さな波が時々現れるものと思われます。問題はまた変異株が現れるかですが、今のところはオミクロンの中の変化だけです。今小児用コロナワクチンはオミクロン対応ではなく、感染予防効果はかなり低いですし効果の持続期間も短いです。小児用オミクロン対応ワクチンが使用できるとのニュースが流れていますがこれは追加接種の場合であって1回目2回目には接種できません。
4歳以下の乳幼児用コロナワクチンを推奨しているのは米国と日本だけで欧州の国は推奨になっていません。その米国でも4歳以下のコロナワクチン接種率は10%程度です。最近イタリア小児科学会が4歳以下のコロナワクチンについて基礎疾患のある児に限り推奨すると声明を出しましたが、健康な乳幼児には推奨しないとも書いてあります。最近英国小児科学会も同様の声明を出しました。
第8波の今後 2022.12.18
現在の状況はやはり第8波と言っていいかと思いますが、どこまで増えるのか予測がつきません。理由の一つは第7波と違って感染力の強い新しい変異種が急速に勢力を伸ばしているわけではないということです。第7波はオミクロンBA5が現れ感染力の強さから急激に拡大したわけですが、今も感染のほとんどはBA5です。何か新しい変異種がどんどん増えているわけではありません。ではなぜ感染者が増えているかというと、ひとえに様々な制限が緩和され人々の活動が活発化しているからと考えます。w杯の日本の活躍も少しだけ寄与しているかもしれません。だから増加のペースも7波に比べゆっくりです。通常増え始めると1か月くらいでピークに達するのですが、今回の場合予想がつきません。
第8波の予測 2022.11.6
10月末から全国的にコロナ患者数が増えており第8波の始まりではないかとの意見が出ています。もう少し様子見ないと断定はできないですが、第8波の可能性は十分にあります。では第8波はどうなるのか。結論から言うとおそらく第7波のようなことにはならないと考えています。なぜか?それは今増えているコロナウイルスの変異種が特定のものではないからです。国立感染研や地方衛研のデータを見ると、いろいろな変異種、例えば
BA2.75,XBB,BQ1,BQ1.1など様々な変異種が検出されていますが特定の種類のウイルス変異種が急激に増加しているという傾向はありません。これが第6波第7波と違うところです。さらにいろいろな変異種が特に感染力が強いという所見もありません。ですから今患者数が増加している理由は、いろいろな制限が緩和され、人の動きが活発になった結果と考えられます。いろいろなイベントが再開になり、また旅行についても促進するような対策が講じられているため今後も患者数が増加すると思われます。では今後どうなるのか?2つのパターンが考えられます。一つはオーストラリアの例です。オーストラリアは3月ごろからかなり対策が緩和され、その後は患者数は横ばいの状態が9月ごろまで続き、そこから数は減り始めています。欧州のドイツフランスイタリアは9月ごろから患者数が増え始めましたが10月中旬頃から減少に転じています。どちらのパターンを取るのか分かりませんがおそらく急激に増えて第7波を超えるということはまずないと思います。
インフルエンザワクチン接種の今年の意義2022.9.10
インフルエンザはこれで2年間流行がなく、その前の年も小流行でしたから国内では小児を中心にインフルエンザの免疫がない人が増えています。こうした状況でいったんインフルエンザの流行がはじまるとかなりの大流行となることが予想されます。その結果インフルエンザによる重症者が増え、小児と高齢者を中心に死者が多数になると予想されます。それが今年なのか来年なのかその先かは不明ですが、今のうちから毎年免疫をつけて置くことが必要と思われます。0歳のお子さんはインフルワクチンは感染予防効果はあまりありませんが重症化予防効果と来年2回目の時のワクチン効果を増強する効果があります。また1歳〜3歳のお子さんは3歳以上のお子さんよりワクチン効果が高いことがわかっています。ワクチンを接種することを強くお勧めします。
オミクロン株対応コロナワクチンについて2022.9.4
オミクロン株対応コロナワクチン接種が始まるとのことですが。そもそもこのオミクロン対応ワクチンがどの程度の感染予防効果があるかは不明です。人間での感染予防効果のデータはありません。オミクロン株に対する中和抗体の上昇が従来型に比べ1.7~1.9倍になるというデータだけです。有効性のデータが今後出てくるかとは思いますが。
ノババックスコロナワクチン2022.07.27
第3のコロナワクチンとも呼ばれていますが、製造形式がm-RNAでもウイルスベクターでもなく、以前から使われているタンパク組み換えワクチンです。B型肝炎ワクチンと同じ原理でウイルスの遺伝子部分を人工的に作ったもので自然のウイルスではなく感染性はありません。B型肝炎ワクチンは20年以上の実績があり、長期の安全性は証明されています。また短期の副反応についても、頭痛倦怠感はやや多いものの発熱は4%と少なく、その他の副反応は極めてまれです。政府の分科会のデータでは発熱は10%とファイザーの4分の1程度頭痛倦怠感は27.6%39.7%とファイザーの半分程度でした。一番心配された心筋炎ですが、欧米から心筋炎の増加はなかったという報告がされており、まず心配ないワクチンと思われます。7月24日の日曜討論でも政府分科会の尾身会長が推奨していました。肝心の効果ですが感染予防効果は80%と報告されており、まずまずの結果と思われます。今後ノババックスワクチンが主に接種されることが望まれます。5歳から11歳のワクチンですが現在ノババックスと同じ製造原理のものが申請中とのことで、これももう少しで出てくるのではないかと思われます。
3種混合ワクチンの新型コロナ感染に対する効果について2022.07.01
今年2月にThe Pediatric Infectious Disease Journal という欧州の雑誌に「コロナに重症度は何故年齢によって異なるか」という論文が掲載され、様々なワクチンについて接種の有無とコロナ感染の有無、重症度が比較検討され、3種混合ワクチンとMMRワクチンの接種がコロナ感染の重症度を下げているというデータが示されました。BCGについてははっきりした結論が出ませんでしたが、BCGについてさらに継続して効果を調査するとのことでした。日本では4種混合として1歳半ぐらいまでに4回接種され、MRワクチンは1歳と5−6歳で2回接種され、おたふくも同じタイミングで2回接種されていることが多いかと思います。ですからここまでは欧米と同じなのですが、欧米では4−6歳に3種混合が百日咳の予防のために接種されています。日本小児科学会も最近4−6歳での3種混合ワクチンの接種を百日咳の予防のため推奨しています。百日咳予防が主な目的ですがコロナ感染の予防あるいは重症化予防が期待できますので、当院もこのワクチンの4−6歳での接種をお勧めしたいと思います。
小児でのコロナウイルス感染とMIS-C2022.06.12
これまで日本では小児のコロナ感染は少なく、重症化も極めてまれとされてきました。しかし昨年末からの第6波では日本でも多数の小児が感染しています。すでに10歳未満で6人、10〜19歳で8人の死亡例が出ています。しかしこの14人のうち12人は重い基礎疾患のある児であり基礎疾患のない児は2人だけで、しかも基礎疾患がないのに死亡した2例のうち1例はコロナワクチンを2回接種していました。次に重症化例ですが確かに一定数出ています。特に欧米で問題になっているMIS-C(川崎病類似疾患)ですが米国ではすでに8000例以上発症し63人が死亡していますが、日本ではまだ10数例のみで死亡例はありません。ただ日本ではコロナによるクループ、脳炎、痙攣重責が増えておりこのデータがまだ解析されておりません。ですから小児へのコロナワクチンの是非については最終的な結論は出ておりません。
5−11歳のコロナワクチンについての考え方 2022.03.21(2022.9.16改訂)
この小児用ワクチンは12歳以上のワクチンと異なる特徴があります。
第1点は小児用ワクチンは12歳以上に用いられているワクチン(成人用とします)とは実効量も濃度も添加液も異なる別のワクチンだということです。つまり成人用のワクチンの効果、副反応が当てはまらないということです。もう1点の重大な違いは最初は義務接種とならなかったことです。義務接種になると自治体にいろいろ責任が生じますがそれがないということです。これはいろいろ法律面で差が出てきます。
義務接種とならなかった最大の理由はこのワクチンのオミクロン株への有効性が実証されていなかったからですが、最近米国CDCからこのワクチンの有効性が接種後14ー82
日で31%であることが報告されました。これはデルタ株に対する有効性(約90%)に比べかなり低い数字です。12歳以上では英国のデータでは2回接種しても4−6か月でほとんど効果がなくなることがわかっています。ですから小児用ワクチンでは3か月以後では効果がさらに下がると思われます。
さらにこのワクチンの副反応が徐々に明らかになってきています。心筋炎は以前から言われていた話ですが、さらに自己免疫疾患の誘発がわかっています。さらに最近このワクチンによって川崎病類似疾患が発生していることがわかってきました。さらに最近米国から5-11歳への接種870万回で5歳と6歳の女児の死亡が報告されました。この頻度だと日本で同じ年齢の70%が接種すると数人の死亡が出る計算になります。12歳から19歳では成人用約700万人接種で5人が死亡しています。これは同年代に接種する2種混合にくらべてかなり多い数です。2種混合は24年間で2000万人に接種されていますが死亡はゼロです。こうした副反応の実態は時間が経たないとはっきりしません。急いで接種するのは避けたほうがいいと思います。
コロナオミクロン株の今後の予想とワクチンの効果2022.01.12
昨日コロナウイルスに関する講演があり興味深い内容だったので要約します。
まず最初にオミクロンが流行した南アフリカですが11月中旬から流行が始まり12月中旬にピークとなりそこから急激に減り始め今はもうすぐ収束と言う状態です。つまり1か月でピーク、もう1か月で収束という経過です。次に12月に流行が拡大した英国は1月4−5日にピークとなりその後減り始め昨日の段階でピークに3分の2というあたりです。これを日本に当てはめると1月末がピークでその後減り始めるという予測です。
オミクロンは感染力が強いということですが実は全幅機関がこれまでの5日から3日に短くなっているのがその実態で伝播力はそれほど変わらないとのことです。つまり2倍に増える期間が従来の半分くらいなので急速に増えるのです。重症化率は低く死者も少ないようです。
ワクチンの効果はオミクロンに対してかなり低くなっているようで発症予防効果は10%くらいしかないようです。追加ワクチンを接種するとこれが70%まで上がるのですが10週後にはまた40〜50%にまで下がってしまいます。
コロナ変異株とオミクロンについて2021.01.04
オミクロン変異株が世界で増加中です。感染力が強いというのは間違いないようで、日本でも今月中に半分がオミクロンに置き換わると言われています。変異株うち最初のアルファ株が英国で出たのは一昨年12月頃でした。次のデルタ株が出たのは昨年5月でインドで急増しました。そしてオミクロンが南アフリカで急拡大したのは昨年11月です。こう見てくると約6か月ごとに新種の感染力の強い変異種が出ています。すると今回のオミクロンが収まっても6月くらいには新しい変異種が出てくるのではないでしょうか。オミクロンについて触れると、最初に報告された南アフリカはもう減少傾向でもうすぐ収まりそうです。これを日本に当てはめると2月がピークで3月にはかなり収まり4月にはいったん安定するのではないでしょうか。あくまで推測ですが。
小児用コロナワクチンについて2021.12.05
米国で5歳から11歳までの児を対象に小児用コロナワクチンが製造され緊急使用が認められ、接種が始まっています。日本でもこのワクチンの使用につき議論が始まっています。このワクチンは容量が成人用の3分の1でしかも緩衝液が成人のもと異なり、また濃度も異なり、成人用のワクチンとは別物になります。ですから成人用ワクチンのデータが当てはまりません。副反応は成人用に比べ少ないようです。ですから接種の是非は米国のデータを見ないと判断できません。
コロナウイルスの変異2021.09.26
コロナウイルスはRNAウイルスのため変異しやすく、約2週間に1回変異が起こります。ほとんどは感染力に無関係ですが時々、感染力に関係する変異が起こります。最初に現れたのがアルファ株で現在ほとんど消滅しており、現在最も主流なのがデルタ株です。デルタ株が最も感染力が強いため、ほかの変異株を押しのけて主流になりました。今後も変異株が現れるでしょうが、今見つかっている変異株の中で感染力が強そうなのはミュー株です。ただしミュー株がデルタ株より明らかに感染力が強いというデータはありません。また今ミュー株が急速に増加しているという国もありません。日本でもミュー株は確認されましたが、現在ほとんど確認されていません。と言うことは今しばらくは落ち着いた状態が続くのではないかと考えられます。もちろん来年のことはわかりませんが。
小児への新型コロナワクチンについてーー特にファイザー、モデルナ社について 2021.08.09
昨年11月ファイザー社がm-RNAコロナワクチンを開発し治験成績を公表し12月から接種が始まりました。mRNAワクチンは画期的な方式のワクチンで優れた発症予防効果を示しています。しかしながらこの方式のワクチンが人間に使われるのは初めてで、安全性に関しては長期のデータは存在しません。これまでのワクチンは新しい方式のものができると治験で安全性を確認したのち対象疾患を少しづつ増やし、対象者を拡大し、常に安全性と有効性を確認しながら、その範囲を広げてきました。これまでのワクチンではいくつかの失敗例、不成功例があり、それなりに犠牲者が出ているからです。
今回のように新しいワクチンがいきなり大規模に接種されるという事態は過去一度もありませんでした。ですからワクチン学会、感染症学会はこのワクチンの開始にあたりとても慎重なコメントを発表しています。
そして今回フラッシュニュースにありますように、CDCから心筋炎心膜炎の副作用が公表されました。コロナワクチン接種で若年男性で心筋炎の増加が認められています。アメリカではコロナの流行により20歳未満で400万人以上が感染し数百人の方が亡くなっています。ですからCDCは12歳以上にこのワクチン接種を続けるように勧めていますが、日本は全く事情が異なります。日本では20歳未満の感染者はようやく15万人くらいで重症者は極めて少なく10人前後で、死者は1人です。ワクチンによる心筋炎の発生率は若年世代では10万人に2〜3人で12~24歳の男性に限ると10万人に5〜6人です。12~19歳に全員ワクチンを接種すると250人程度の心筋炎が発生します。重症者がほとんど出ないのに心筋炎が250人も出るというのはとんでもない話です。心筋炎は小児でも死亡率31%の難治性疾患です。コロナワクチン後の心筋炎例は大多数は治っているとのことですが、心筋というのは基本的に再生しません。その筋肉に炎症を起こすというのは軽症であっても重大なことと思われます。8月23日FDAがファイザー社コロナワクチンを正式承認しましたが、これは16歳以上についてで12歳から15歳については承認されませんでした。
結論;今の時点では18歳未満のワクチン接種は糖尿病などのリスクがない場合は急がないほうがいいと思います。子供の感染はほとんどが親や教師などの大人からです。子供への感染を防ぐためには彼らの周囲にいる大人がワクチンを接種すべきと考えます。特に12歳から15歳まではハイリスクを除いて接種すべきではないと思います。
追記(2021.09.20);最近英国のワクチン委員会が「コロナワクチンの小児への接種」につき声明を出し小児はデータが蓄積されるまで接種を待つべきとしています。また英国は12~15歳の小児にはコロナワクチンは接種していません。英国では18歳未満100万人がコロナウイルスに感染していますが死者は2名だけです。
小児における新型コロナウイルス感染症の現状 2021.5.20 小児科学会ホームページから
1)新型コロナウイルス感染流行第4波では新規感染者は増加していますが、小児患者の割合はわずかな増加にとどまっています。
2)子供が変異ウイルスに感染した場合多くは無症状、軽症にとどまっています。
3)小児の新型コロナ変異株への感染は、大部分は成人からの感染でこれは従来と変化ありません。
新型コロナワクチンについて 2021.02.17
日本でも新型コロナワクチン接種が開始されました。ファイザー社の新型コロナワクチンはm-RNAワクチンと言って、全く新しい形式のワクチンです。これまでは不活化ワクチン、生ワクチンなどすべて病原体を用いてあるいは病原体の構造を使って製造したワクチンでした。ファイザー社のワクチンは病原体は一切使わず、コロナウイルスのたんぱくの遺伝情報を用いて作ったワクチンでそのため安全性が高いと言われています。現在海外でワクチン接種が進んでいますが大きな副反応は報告されていません。ただまだ観察期間が短いため、今後何か副反応が出てくる可能性は否定できません。
新型コロナウイルスワクチンに関する提言ー感染症学会2020.12.30
コロナワクチンに対する考え方が示されています。まだわからない点があるため、ここまでに明らかになった点について触れています。ファイザーのコロナワクチンは有効率が95%と素晴らしい成績を示しています。ただ注意しなければいけないのは、有効率の評価は感染を予防できたかどうかではなく、症状を抑えられたかどうかで判定していることです。次にこの成績は高齢者や糖尿病高血圧などの合併症がある方も含んでいますが、75歳以上の方は少ないということで、75歳以上の有効性は評価できないそうです。また対象者はほとんどが白人でアジア人は5%程度で、日本人でも同じように有効かどうかは日本のデータを待たなくてはいけないそうです。日本での治験も進んでいるところで結果どうなるか興味深いです。